性病

性病

性病は、STD(sexually transmitted diseases)といって、主に性行為によってうつる感染症という意味です。

泌尿器科では主に、男性の性病を対象とします。(女性は主に婦人科です。)

いろいろな抗生物質ができたことによって、安心している方も多いようですが、近年は以前にも増して性病にかかる人が増えてきました。

性病に対する正しい知識がないために、性病にかかっていても気づかずにセックスパートナーにうつしてしまう、完治する前に、もう症状がなくなったからといって途中で治療をやめてしまう場合があるようです。

最近では、性行動の多様化(いろんな方法で性的快楽を得る)にともない、本来、尿道や尿道・腟からの分泌物に存在するはずの菌やウイルスが、のどや目の粘膜から見つかることがあり、咽頭炎や結膜炎の原因になることがあります。

性病の種類としては、淋病、梅毒、クラミジア、ヘルペス、コンジローマなどですが、最近は性交渉によってうつる病気として、肝炎そして後天性免疫不全症候群(エイズ)があります。

特に治療法が見つかっていないエイズが、よく理解されていないこともあり社会的問題として取り上げられています。

性病かなと思ったら

いつごろ性交渉があり、どんな症状がいつからあるのかが、とても大切です。
もし、少しでも異常があったら検査を受けることはもちろんですが、パートナーにも感染している可能性が大きいので、症状がなくても必ず検査を受けるようにすすめてください。
早めに受診をし、必ず完治するまで通院しましょう。

代表的な性病について

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淋病

淋菌によって起こる代表的な病気が淋病です。
淋菌とは、グラム陽性の球菌で二つの対になっている菌です。
尿道、子宮、目などの粘膜を侵す性質があります。
淋病にかかった人と性交することによって感染することが多く、性病の中でものこの淋病にかかる人が一番多いようです。
当然セックスがなければうつりませんから、思い当たることがあるかどうかということが問題です。
実際には性交渉はないものの、風俗産業従事者とのオーラルセックスで口→性器の接触により感染する例なども多くあります。

淋病の症状としては、思い当たるようなことがあってから5日から1週間経って、黄緑色っぽい膿が出てきて排尿時に痛みます。
特に尿道の痛みが強く、場合によっては鼠径部のリンパ腺が腫れることがあります。

膿はひどくなると、どんどんと出てきて、ティッシュを当てて来院する人もいます。
また、淋病はクラミジアと合併していることが多く、淋病にかかった人の半分はクラミジアにもかかっているといわれています。そのため、抗生物質の使い方によっては、淋病だけ治ってクラミジアだけ残ってしまう人も多く、黄色い膿は止まっても白っぽい膿だけがたくさんいつまでも続くというケースがあります。
必ずパートナーにも検査をしてもらい、もし淋病にかかっていた場合には治療をしなければなりません。もし自分が治っても、相手が淋病の場合にはまたうつってしまいます。(ピンポン感染)治療は抗生物質療法ですが、最近ある種の抗生物質が効かない、抵抗性を持ったタイプの淋菌が急速に増えてきています。

数年前までは効果があるとされていたある種の抗生物質が今はほとんど効かない状況です。
数年前とは治療法も大きく変わってきています。
見た目の症状が治まったからといって治療を途中でやめてしまうと、菌が残っていれば慢性化する可能性があり治療は大変困難になります。
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クラミジア

高齢妊婦、青年期の男女、不特定多数のセックスパートナーを持つ方は、クラミジアの感染率が高いようです。
クラミジアは淋病と合併している場合が多いので、淋病にかかった場合には、クラミジアの治療も行うことが望ましいでしょう。
尿道から白っぽい膿が出て、尿道炎になることがあります。
炎症がみられない場合には、無症候性ですから、気づかないでそのままでいることもあるようです。
淋病と合併している場合を考えて、抗生物質による治療を行います。
しかし、クラミジアはなかなか治りにくく、淋病の治療後もクラミジアだけ残ってしまう場合が多く、辛抱強い治療が必要です。
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性器ヘルペス

ヘルペスはウイルスの感染で起こし細胞の中に隠れてしまいますから、表面的には治っても、体調を崩し、抵抗力がなくなったときなどにまた出てきます。
ヘルペスと聞くと、口の周りにできるプツプツを思い浮かべられるのではないでしょうか。
あれもヘルペスですが、口唇ヘルペスといいます。
両方とも単純ヘルペスウイルスが原因でほぼ同じ病気なのですが、ウイルスの型が違います。
口唇ヘルペスは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)が多いとされています。
さらに1型は上半身のある神経に、2型は下半身のある神経に隠れ、疲れや風邪などの体力が落ちた時にそれぞれ発症するといわれています。
症状は、陰茎のところに水泡ができます。
一回できたところにまたできやすいのが特徴です。
この水疱はパチッと破れてとても痛みます。
ちょうど血豆をつぶしたのと同じ状態になり汁が出てきます。

ヘルペスで特に怖いのは、出産を控えた女性がかかってしまった場合です。
出産時に、この汁が子どもの目に入ってしまうと角膜炎になり、ひどい場合には失明することもあり、とても危険です。接触によって出血します。

治療は抗ウイルス薬(内服薬・点滴薬・塗り薬)があります。
ただし、この治療でウイルスを完全に排除することは非常に困難です。
発症しているウイルスには効果的ですが、神経の奥深くに潜伏しているウイルスには効果が低いことがその理由です。
よって発症した場合は、なるべく早く治療を開始し症状を抑えることが大切です。
しかし、治療により症状が改善してもほとんどが再発を起こします。
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尖圭コンジローマ

ウイルスによって起こります。
イボみたいにボコッと出っぱった形をしています。
よくみるとギザギザしていて、とんがっています。
痛みも何もないのが特徴です。
プリンプリンと動くような感じです。
軟膏を塗るほか、イボのように出っ張った部分を取り除く手術を行いますが、完全に治るのは困難なことが多いです。
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肝炎

B型肝炎は、最近性的接触によってうつるケースが多く見られるようになってきました。
ヘルペスと同様、肝炎もウイルス性のものです。
1994~1998年の間に米国で発症した急性B型肝炎の40~50%が性感染症であったようです。
日本での状況は多くは性感染症と考えられていますが、詳しくはわかっていません。
しかし、医療従事者の針刺し事故や幼少期の集団予防接種における注射器の回し打ちなどを原因とするものもあります。
原因が性感染症のみではないことは、しっかりと理解していただきたいことです。
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梅毒

感染して3週間で外陰部の初期硬結、3ヶ月でバラ疹、扁平コンジローマ、3年で大きな発疹と結節がみられます。現在では不顕性感染といって、発疹がみられない梅毒があります。
いまは、血液を調べないとわからないので、本人はかかっているとは知らない場合が多いようです。

現在の梅毒は、ほとんど症状がありません。
淋病のように膿がでるわけでもありませんから、しばらくの間気づかないことがあります。
しかし、しばらくすると症状が少しずつ現れてきます。
典型的な症状として、亀頭のところに潰瘍ができることです。
普通、潰瘍ができると大変痛いものですが、この潰瘍はあまり痛くないのが特徴です。(初期硬結)
そして第二期の症状としては、扁平コンジローマができることです。
コンジローマというのは、海綿みたいなのがポコッと出っ張ってくるような感じになります。
扁平コンジローマの形は、蚊に食われた後に似ています。

梅毒にはペニシリンがとても効果的な薬です。
梅毒は少し治療しただけですぐに引っ込み、治ったようになりますが、治ったわけではありません。この引っ込んだ状態を潜伏梅毒といいます。
この状態で治療をやめてしまうと、また症状があらわれて、なかなか治りにくくなり慢性梅毒になることがありますから、しっかり梅毒を治療しておきましょう。
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後天性免疫不全症候群(エイズ)

国際的に注目されているのが、エイズ(後天性免疫不全症候群)です。
アメリカで最初にエイズが発見されたのは、1980年です。
この病気は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染して起こります。
感染者、つまり陽性と判定された人は、かなりの潜伏期間をおいて現在ではその多くが発病します。
発病までは、普通3~4年、または10年かかることもあります。
アメリカでは心臓疾患、がんについで死因の第三位です。

このように、エイズが恐ろしい病気である理由は、現在HIV感染を完全に治癒する薬剤が、まだ発見されていないからです。
危険因子として、日本ではこれまで血液凝固因子製剤によるもの(薬害エイズ問題)だといわれていましたが、最近の厚生労働省発表では、20歳代から40歳代の異性間性的接触による感染者の増加が報告されています。
しかし研究や治療も進んでおり、早期に発見されれば、感染しても発症させない状態を長く維持できるようになってきています。
自分自身のため、そして親しい人のためにも、早期発見がとても重要です。

後天性免疫不全症候群(エイズ)は、保健所でも検査が可能です。
匿名・無料での検査が可能ですので、お近くの保健所にお尋ねされてはいかがでしょうか。
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